#12 拝啓、1年前の自分へ

拝啓、1年前の自分へ

君は来月から社内のCRM移行プロジェクトの開発リードを任されるようになる。 しかし開発リードとはいえ、実際は外部の協力会社との連携、社内の他部署のタスク管理、全体のスケジュール調整など幅広い役割を担うようになる。今現在ようやくプロジェクトは落ち着きつつあるけど、これから君は1年近く慣れない業務に試行錯誤を重ねることになる。この手紙ではこれからプロジェクトをリードしていく君へ、1年後の君自身からアドバイスを書き記した。 これを実践するかは君次第だが、このアドバイスで君に良い未来が来ることを願っている。

1. 体制図を作成し関係各位の役割と責任を明確にしよう

君がこれから携わるプロジェクトは登場人物とその役割が曖昧だ。 誰かは、他の誰かに何かを期待しているかもしれない。 とあるタスクに関してAさんはBさんが担当者だと思っている。けどBさんにはその自覚はない。 そうすると重要なタスクに漏れが発生したり、意思決定が出来なかったりする。 君はプロジェクトの登場人物をリストアップして各人の役割と責任を明確にしないといけない。

2. プロジェクトのゴールを明確にしよう

プロジェクトのゴールを明確にすることは一番大事かもしれない。 そのプロジェクトを完了させるには何をしなければいけないか、 やらなくても良いことや後回しにしても良いことはあるか、 それらが明確にならないとプロジェクトの完了が徒に先延ばしされてしまう。 ゴールを明確にすれば、集中しないといけないタスクは自ずと見えてくる。

3. ドキュメントは無闇に作りすぎず、メンテナンスして大切に育てよう

議事録や進捗、残タスクを管理するのにドキュメントを作成することは避けることができない。 しかし、無闇矢鱈に作成すると管理することが難しくなる。 メンテナンスされていない使われていないドキュメントは、正しい情報を供給しないので効率的な業務の妨げになる。 ドキュメントは役割ごとに限定してメンテナンスするようにしよう。

4. 関係者の認識を統一するために全体ミーティングを定期的に開催しよう

情報の流通が不十分だと各人で物事の認識が合わずタスクの漏れや質が低下する。 伝言ゲームをしていると内容が歪んでいくのは避けられない。 何一つ独立したタスクは存在しないのに、誰が何をしているか、何に困っているのか分からないと作業が無駄になったり、余計に時間がかかったりする。 定期的に全体ミーティングを開催し進捗や残タスクを共有することで、皆が全体を見通し、より効率よくプロジェクトを進めることができる。

5. 現実的なリリースの日程目標を立てよう

人はそれぞれ一定期間内に出来る作業量のキャパシティーがある。無理なものは無理。 仮にリリース期限があれば、それは本当に守る必要があるものなのか(WANTではなくMUSTなのか)確認しよう。 MUSTでキャパシティーを超えているものであれば助けを求めよう。応援が呼べないのであれば君のプロジェクトは単純に優先度が低いだけのことだ。 WANTなものであればタスクの見積もりをして実現可能な日程目標へ修正しよう。 君のチームはこの先、深夜残業や休日出勤をすることになる。 期限に合わせるためにチームのメンバーは一生懸命働いてくれる。スプリントのポイントが非現実的なものになってもメンバーは最善を尽くしてくれる。 しかし、後々見返すとその8割以上は無駄なものだったと言わざるを得ない。なぜならハードワークして働いた成果(コード)は数カ月後の今も本番稼働していないからだ。 残念だが今の君はリーダーとしては無能だ。だけど1年後は少し改善されているはずだ。

6. リリースそのものではなく、リリースした後にユーザーへ価値をもたらすことを最優先の目的としよう

プロジェクトは普通、うまく行かないものだ。次第に遅延を繰り返すことに慣れてしまうかもしれない。 それが遅延なのか、適切なスケジュールに最適化さるプロセスなのかは不明だ。 ただスケジュールの変更が繰り返されると一種の引け目を感じることになり、なんとかリリースしようと躍起になる。 しかし忘れてないけない。プロジェクトの目的はリリースそのものではなく、リリースすることでユーザーに何らかの価値をもたらすことである。 これが出来ないのであればプロジェクトを進める意味はない。中止する権限には君にはないし、社内で決まったことであればそれに全力を注ぐ選択肢以外は存在ない。ただ何らかの価値がもたらされるように働きかけることはいくらでもできる。 君や君のチームメンバーの苦労が無駄にならないように常に価値をもたらすことを意識しよう。

以上が君へのアドバイスだ。 忘れないでほしいのは、このアドバイスを書いている1年後の君もまだ発展途上だということだ。 これから君がプロジェクトを進めていく上でここには書かれていないことが君を助けることもあると思う。 君はこのアドバイスだけを頼りにせず、常に情報をインプットして試行錯誤を繰り返してほしい。 そしてここに書かれていない新しいTIPがあれば再び過去の自分へ手紙を書いてくれ。

幸運を祈る

敬具